さて、試聴室ないしは試聴コーナーを予約して聞くからにはこちらも色々と準備をしなければならない。
どんなものを試聴ソースとして持ち込むか?
やはり、今現在最も流通しており、いまだにメインストリームであるCDを選択。
実際、PCオーディオの手軽さにはまると、そっちの役割が大きくなるんだが、また話が脇道にそれるので割愛。機会があったら追って書きます。
1.Gentle November 山下洋輔トリオ(武田和命) 同名アルバムからタイトル曲
坂戸市民会館での客入れナシのライブ録音とのこと、ジャケットにもステージ上で音調パネル立てまわした様子が撮影されている。和命コルトレーンと言われるほどプレースタイルはコルトレーンに似ているが、実にまろやかな優しい音を出す。 清瀬のFidelixを訪ねたときにこれを持ち込んで、かけてもらったのだが、冒頭左奥で聞こえるシンバルのかすかな響き(たぶんカップのところをごく軽く叩いているのでは?)が綺麗に聞こえるか、ロングトーンの終わるあたりでの息遣いがリアリティを持っているかどうか、全体的な広がりなど…考慮すべき点がおそろしく高いレベルで達成されているのに驚愕、その場でCapriceを注文した思い出の曲であるので、これは外せない。
2.真夏の果実 Shanti Born to Singから
最近のスピーカー試聴イベントでかなりの確率で使われているShanti。実際音も良いし、定位を見るのにも良い感じ。ギター二本が絡み合う部分でしっかりと演じ分けられているかどうか…
あと、口の大きさというのも気になるところ。
3.Takin’ it to the Street Doobie Brothers 同名アルバムからタイトルトラック
冒頭、タイラン・ポーターのブリッとしたベースが響く。このベースの音がタイトに聞こえるかどうか、ほぼそれだけ。あとはツインドラムとコーラスなどきちんと分離して聞こえるかどうかが焦点。音数の多い曲をどれだけきちんと聞かせられるか、この辺ゴチャッとするあたりなんで、注目してみた。
4. These Foolish Things Billie Holiday
女性ボーカルの艶をみようということで入れたのだが、ちょっと唄モノが多すぎるのでのちに曲を変更
4.IV. Adagietto:Gustav Mahler - SymphonyNo. 5: Sehr langsam エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団
名画「ベニスに死す」でおなじみの名曲。弦が美しい…この弦の美しさをどこまで表現できるか、こればっかりは好みだが、自分の好みの音が出てくるかが問題… ちなみに、カラヤンの録音がアダージェットの美しさに関しては著名だが、私はこのインバルのアダージェットの美しさに端正さを感じて好ましく思う。
5.め組のひと ラッツ&スター
82年の日本の歌謡曲である。こてこての歌謡曲である。リバーブの感じもドンシャリな感じも力一杯歌謡曲である。これをきちんと聞かせられるか、それともドンシャリが高級ドンシャリになるか…このあたりでスピーカーの性格が見える(と思う)
これらを持ってあちこちに聞かせてもらいに行ったわけだが、全曲を聴いた場合もあれば1曲で済ませたのもある。以下、それぞれにスピーカーとインプレッションを簡単に…
某月某日 Dali、デンオンの試聴室@恵比寿にて
これって、わざわざ時間を取って試聴機材を運び込んでいただいたわけで、こんな事ができるのかと驚愕した。同時に恐縮した。でも、すばらしいスペースですばらしい音を聞くことができた。まことにありがたい。従ってすごく気合を入れて聴いた。
Ikon 6 この日の本命だった。予算からいってこれが上限を少し超えるような感じだったのだが…
それなりに高級感もあり、それなりに分離もしっかりしている。中高音に透明感のある美しさがある反面、ちょっときらびやかな色付けが多いかなと思うこともあった。
真夏の果実でのヴォーカルの「サ行」やドゥービーで感じたのだが、最後の「め組の人」で決定的になった。聴いちゃいられないほどドンシャリで、途中で「あ、良いですから止めてください」とお願いしたほど。好きな人には良いのかもしれないけど、この音の傾向は自分のものではないなと感じた次第。
Mentor 6 Ikon6との比較で、「ついでに」という事で持ってきていただいたもの。依頼してから「あ~ Mentorでもメヌエットの方にしておけば良かったかな~!!」と後悔していたのは内緒だ。ちなみに、Mentorとは規範となる人とか教師とかそんな意味、メントールじゃなくてメンターと読みます。煙草じゃないからね…(汗)
ところが、これが比較対象のIkon6をあらゆる点で凌駕していた。非常にすばらしい音だった。
まろやかでいながら透明感があり、ぬくもりと繊細さが混在しており、音場感に富んでいるのに定位は非常にしっかりしている。金管楽器のきらびやかさもボーカルの艶もベースの分厚さも表現力がすばらしかった。
何よりも特筆すべきは「め組のひと」で、あれほどドンシャリだった音がちゃんと「曲」になって聞こえている。一曲聴き終わってから担当のデンオンの方に「いや~!ちゃんと音楽になってましたね~!!」と驚かれたほど…
とはいえ、予算が大幅にオーバーしたので非常に悩ましく試聴室を後にしたのであります。
某月某日 Dyna555 2階にて
KRIPTON Virgore KX-5 Fidelixの中川さんは「バスレフが嫌いなんですよね…余韻の低音に頼ってる感じで」とおっしゃる。なので自分でも密閉型をあれこれと試してみた。ロジャースだったり、自分の家のAVシステムに組み込んでいるTannoyのDC2000だったり…
これも密閉型、なので低音は出にくい。
美しい…とても美しい…とても整った端正な美しさだ。
ただし、儚い…はかなさといったらもう…こまっちゃうくらい儚い。
弦楽四重奏、ボーカルのソロ、こんな感じのソースなら大得意だろう。実際弦が得意だった。
聴いていてもたしかに中高音の美しさを表現する術がないほど。ただし… 低音があまりにもない…無さ過ぎ…
エイジングによりいくらかは違うだろうとは思うけど、それでもやはりね…
メイン以外のスピーカーを導入する機会があったらおおいに考えてみたい。
綺麗な音だ、しかもかっちりと定まっている。楷書のような音だ。定位がビシィッと定まり、内振りのスピーカーの頂点に位置して音と対峙するとジオラマのように風景が広がる。かっちりとまとまった様は同じイギリスの製品でもロジャースなどの系譜とは全く違った、ある意味でドイツ的な印象さえ与える。
「こりゃあ売れるわなぁ…」と思っちゃうね。
見た目も独特で、ケブラー繊維で編んだスピーカーコーンを使用しており、その黄色がアクセントになっている。ミッドレンジの音の美しさはこのケブラーのおかげかな?
ケブラーというとオガサカのスキー板でおなじみの素材だが、軽くて強いということで応答性に優れているのだろうね…(根拠の無い勝手な推測)
ただ、音場感から言うと、探している傾向のものではないし、ちょっと高音がきついかなという感じもある。怠惰な私としては三角形の頂点にいていつも対峙しなければならないモニター系のものというのも少々疲れるのは事実だ。
これは店においてあったものを聞かせてもらっただけなので、正確な試聴ではない。
Mentorに比べると音が分厚くなっているという感じがした。分厚くなった分チャーミングさが薄れたかなという感じがなくもない。これは好みの問題なのだろう、どうやら自分はいわゆる「重厚な音」というのが少々苦手なのかもしれない。
これも試聴会で聞いたわけなので正確な試聴ではない。
躍動感は十分に感じるし、定位と解像度も素晴らしいものがある。しかしどうにもサイズがデカイのと音が分厚すぎて少々手に余る感じがしたので、今後の検討対象の一つとして考えていたい。
(いったん切ります、続きます)