1992年、LCIIを買った。
なんどか書いていたけど、おそろしいほど高額な中古の車や軽自動車が楽勝で買えるような金額だった。ボーナスをほとんどはたいてそれがやって来たときは目がクラクラしちゃったほどだ。

どこに置くかを考えたときに、最も滞在時間が長いのが会社のデスクだと気づいたので迷うことなくそこがLCIIの居場所になった。
よく上司は許したもんだと思う。もちろん仕事の資料や文書を作っていたわけだが、KidPixとかで遊んだりもしていたんだよね(笑)呆れながらも許してくれた上司には本当に感謝している。
 
当時はパソコン1人1台なんて夢のような時代だし、各部署にはいまだにワープロとかがあったりしていたわけで…
 
かく言う俺もその直前までNECの文豪Mini5hというよくできたワープロを使っていた。

話はそれるけど、ワープロの高品質高機能化って日本のケータイの進化の歴史と似ているような気がするんだよね…ワープロという日本でしか使えない機種に様々な機能が後付けでどんどん追加されていって…しまいには恐竜のように非常に特殊な形態になってしまう…

閑話休題

大塚商会が企業担当者を招いて「アップル・マッキントッシュとソフトウェア展示会」ってのを開いて、俺はそこで見た「Aldus社」のパーシュエイジョン(説得という意味)というソフトを見て驚愕したんだよ。
まぁ、今で言うパワポなんだけどさ、それがマックの美しいビジュアル上で自由自在に動いたりして、その20万くらいするソフトを真剣に欲しがったものだった…数十万円するお値段も驚異的なものだったんだけどね。

そういえば、その展示会でおもしろい経験をした。
PC好きの技術者が管理職になった風情の人が、大塚商会の商品説明のお姐さんに
「これは石は何を使ってるの?」
「石?ですか?!」
彼が聞きたかったのはCPUの機種。当時は(今もそっか)CPUの周波数とか性能に拘る人が多くてね…
彼は「80286」的な回答を求めていたんだね~
ちなみに、この80286ってのは当時のインテルが出していた代表的なCPUであります。

対するマックはいまや携帯電話屋に堕してしまったモトローラがMC68030というCPUを出してマックが採用していたんだけど、そんなものユーザーは問題にしていなかった。
「昨年、私たちに寄せられた質問で一番多かったのは何かわかるかい。CPU(中央演算処理装置)の動作周波数でも、メモリー容量でも、価格でもなかった。iMacはあんな低価格なのに、だよ。」(スティーブ・ジョブズ談)

「68030ですよ、80286と同等です」と俺が助け舟というか余計なお世話で説明してやると、そのオッサンは納得したようでブースから離れていった。
んでもって空いたお姐さんに俺は「このソフトは個人が買う場合ものすごく安くならないのか?」などといった質問でさらに困惑させることになったわけだが…

要は、マッキントッシュをはじめ、アップルの製品で重要なのは
「これを使うとこんな事ができますよ」つまり「これを使ってあなたの創造力を働かせてください、これはあなたのツールです!」というアプローチだったわけで…

NECのPC9801シリーズにとっては
「これはこんなに高機能高性能なマシンです」つまり「これを使いこなせるようになってください」というアプローチなんだよね…
じゃなきゃ同根ソフトなし、OSはMS-Dosはインストールから始めなきゃいかんなんて事が起こるわけがない…

同じ文書を作るのでも、出来上がりの体裁含めて圧倒的な差があった。その差がわかる人はマックを選び、認めたくない人はPC9801シリーズでドットプリンタを使っていた。

あの時、たとえ非常な高額でもLCIIとインクジェットプリンタの組み合わせを得たことがもの凄く大きなことだと思っている。そしてそれがスティーブ・ジョブズがいなくなった後の製品だとしても、与えてくれたものはすごく大きかったのだ…